躍度(加加速度)と車の乗り心地 車の運転と物理 - 高井セミナー

躍度(加加速度)と車の乗り心地 車の運転と物理

物理

今回は、車を運転する際に必要な物理の内容の中でも、今回は、躍度(やくど)または加加速度(かかそくど)と呼ばれる物理量を紹介します。

はじめに

私は、車を運転するようになって1年以上経ちます。走行距離は1万㎞を超えました。そんな私は、車を運転する際には、常に微分積分や物理をイメージしています。微積と物理やっていない人がどうやって運転しているのか不思議なくらいです。

車には、さまざまな物理や数学が使われており、私自身の運転の中でさまざまなものを考えるわけですが、今回はその中でも、人の不快感に深く関係のある「躍度(加加速度)」という物理量について説明します。

基礎知識

速度

速度vは、変位xの時間微分です。微分というのは簡単に言うと、瞬間の変化率ですから、速度vは、微小な時間あたりにどれだけ進んだか(変位xが変化したか)という「変化率」を表します。関係式で書くと、$$v=\frac {dx}{dt}$$です。dは微小変化を表します。

加速度

加速度aは、速度vの時間微分です。すなわち、微小な時間あたりにどれだけ速度vが変化したかという「変化率」を表します。関係式で書くと、$$a=\frac {dv}{dt}$$です。また速度vは変位xの時間微分だったので、2階微分の記号を用いて、$$a=\frac {d}{dt}\left( \frac {dx}{dt}\right) =\frac {d^{2}x}{dt^{2}}$$と表せます。

運動方程式

(ニュートンの)運動方程式は、高校1年「物理基礎」でもやる内容です。運動の第ニ法則ともいわれ、式は、$$m\overrightarrow {a}=\overrightarrow {F}$$です。ただし、質量m[kg]、加速度a[m/s^2]、力の総和F[N]です。

→はベクトルを表します。本来は速度vも加速度aもベクトル量ですが、この記事では省略します。

大学の力学なんかになると、加速度aを微分の形で書いて、$$m\frac {d^{2}x}{dt^{2}}=F$$と表します。

運動方程式の意味は、物体に力を与えると、(質量に応じて大きさに違いはあるが、)同じ向きに加速度が生じる、ということです。

躍度(加加速度)って何?

加加速度というと簡単に推測できるかもしれませんが、躍度(加加速度)jというのは、加速度の時間微分です。すなわち、微小な時間あたりにどれだけ加速度aが変化したかという「変化率」を表します。躍度(加加速度)は英語ではジャーク(jerk)というので、jと表しています。関係式で書くと、$$j=\frac {da}{dt}=\frac {d^{2}v}{dt^{2}}=\frac {d^{3}x}{dt^{3}}$$です。

もちろん、加速度を時間で微分しているので、単位は[m/s^3]です。

実は、大きな躍度は生物に不快を与えることが分かっています。すなわち、不快を最小限にするには、躍度を0に近づければよいのです。

ちなみに、気付いた人もいるかもしれませんが、時間微分していくごとに「加」が追加されます。

躍度 – Wikipedia

車の運転で考える

先ほど説明した躍度(加加速度)を、車の運転に結び付けます。

車に運動方程式を適用する

運転中の車(+乗員)の質量を一定としてmとします。

車にかかる力は、アクセル(ブレーキ)を踏むことによって得られる動力(抵抗力)、空気抵抗力、接地面での抵抗力など、さまざまな力があります。今回は簡単のために、人的要因が一番絡む「アクセル(ブレーキ)を踏むことによって得られる動力(抵抗力)」のみを考え、これをFとします。

また、具体的な値の算出は省略します。

運動方程式に躍度(加加速度)を入れる

運動方程式$$m\frac {d^{2}x}{dt^{2}}=F$$の両辺を時間微分してやると、mは定数だから、

$$\left( 左辺の時間微分\right) =\frac {d}{dt}\left( m\frac {d^{2}x}{dt^{2}}\right) =m\frac {d^{3}x}{dt^{3}}=mj$$

$$\left( 右辺の時間微分\right) =\frac {dF}{dt}$$

であるから、$$mj=\frac {dF}{dt}$$となります。

この式の意味は、物体に力の変化を与えると、(質量に応じて大きさに違いはあるが、)同じ向きに躍度(加加速度)が生じる、ということです。

不快感を抑えるにはどうしたらいいか?

不快感を最小にするには、躍度(加加速度)を最小にすればよいので、上の式から、物体に与える力の変化を最小にすればよいということです。すなわち、アクセルやブレーキを急激に踏んだり離したりなどの短時間での変化を抑えればよいのです。

私が運転で実践しているのは、アクセル(ブレーキ)の踏む強さを、急激に変えないことを意識しています。

街中を走行するときはどうしても早く速度を上げないといけない場面はあります。(高速道路や主要道路での発進時など)しかし、その場合にも、アクセルの踏み込み自体の時間変化を減らすことは十分可能です。

また、前方の車が減速し始め停止するという流れの中では、早いうちから軽くブレーキを踏んでおき、一定の強さのブレーキで停止することを心がけます。

私の身近な人には、普通の道での等速走行時でも、アクセルを踏んだり離したりする人がいます。これは、無駄に躍度(加加速度)を与えていることになります。(実は燃費も悪くなったり。。。)

さいごに

日常生活では、「加速」という言葉自体を乱用している傾向にあります。例えば、早く目的地に到着したいときには、「もっと早く加速して!」と言ったりすることがあります。これは、「加速(速度を上げること)の時間変化率を高めて!」と言っているので、「躍度(加加速度)を大きくして!」と言っていることになります。これで酔っても運転手に文句は言えません(笑)。

他にも、車の運転に関する物理の内容はたくさんあります。(回転半径と遠心力、抵抗力によるエネルギーロスを最小限にする最適航行速度、etc.)

少し難しいですが、面白いサイトも発見しましたので、気になる人はどうぞ。

自動車を物理する

今回は高校1年生でもわかるように簡単に説明しましたが、興味がある人はさらに深くまで調べたり考えたりしてみてください。(数学や物理の授業の題材にするのも面白そうだなぁ…)

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