大学の代数学を学ぶためにおすすめな教科書(専門書・参考書)【大学数学・代数学】 - 高井セミナー

大学の代数学を学ぶためにおすすめな教科書(専門書・参考書)【大学数学・代数学】

レビュー

今回は,大学数学(特に代数学)に関するおすすめの本を紹介します.現代主流の数学の教育課程の順に紹介していきます.

ちなみに私の専門は,数論(特に代数的整数論),類体論です.これらの本で基礎知識は十分だと思います.

基礎知識を身につける本

まずは代数学の基本となる群論・環論・体論です.

(線形代数をやった後にやるべき内容です.線形代数のおすすめ本は下の記事で紹介しています.)

さて,まずおすすめしたいのは雪江先生のシリーズです.

雪江 明彦:代数学1,2

過去にレビュー記事も書いているので参照してください.

新妻 弘, 木村 哲三:群・環・体入門

雪江先生の本は,細かなところまで幅広くカバーされていますが,初学者が初めに読むと相当な時間がかかる恐れがあります.初学者や,学校の授業についていくために読んでみたいという人におすすめなのは次の本です.

この群・環・体入門は教育学部の教科書などにも多く採用されている本です.分量もちょうど良く,標準的な入門書だと思います.

野崎 昭弘 :なっとくする群・環・体

さらに簡単に,雰囲気を知りたい人や,全体像を掴みたい人は,以下の本がおすすめです.

この「なっとくする」シリーズはさまざまな分野の本があります.どれも要点をわかりやすく書いてあります.学習内容をさらに「しっくり」させたいときにも良いと思います.

桂 利行:代数学1,2,3

数学科の人によく使われている本では以下の桂先生のシリーズもあります.

これらのシリーズは,内容としては素晴らしく簡潔で,洗練されていて,分量はとても少なく書かれています.そのため,初学者にとっては相当難しいと思います.一度学んだことがある人が復習や研究の参照に使うときにとても良いと思います.

専門分野を学ぶための発展的な本

代数学を基礎として発展している分野はさまざまです.その中でも,上記の基礎知識に関連する本で,さらに詳しく専門的に書かれている本をいくつか紹介します.

M.F. Atiyah, I.G. MacDonald(訳:新妻 弘):Atiyah‐MacDonald 可換代数入門

この本はよく「アティマク」と呼ばれ,有名な本です.主に可換環論周辺の内容が書かれていて,代数幾何に向かうことをモチベーションとしています.特徴は,演習問題が豊富という点です.もっと言えば,演習問題を通して学習ができる本です.演習問題の解答はついていませんが,有名な本なのでさまざまな人が演習問題の解答をネット上にアップしてくれています.例えば,以下のような記事があります.

Atiyah & MacDonald solutions
2006年4月 by M.Y. Introduction to Commutative Algebra(M.F.Atiyah & I.G.MacDonald)は線形代数、代数入門(群・体)、ホモロジー代数入門、位相入門程度の知識があれば読める。事前に、高木貞治「代数学講義」、佐武一郎「行列と行列式」、藤崎源二郎「代...

さらにこの本は,数論を学ぶ人にとっても幅が広がるおすすめな本だと思います.環論をある程度勉強した人で,代数幾何や数論を学びたい人は読んでみると良いでしょう.

松村 英之:復刊 可換環論

また,可換環論といえば一番有名なのはこの松村先生の本でしょう.可換環論を勉強したい人はこれを手に取ってみることをおすすめします.それ以外の分野の人も,辞書として使っている人は多いと思います.

雪江 明彦:代数学3

可換環論に限らず,代数学の発展した内容を学びたい人は,雪江先生のシリーズの代数学3をおすすめします.雪江先生の代数学シリーズ1,2で勉強した人は,(同じシリーズですので)読みやすいと思います.シリーズに統一して言えることですが,各章の内容ごとに,どのようなモチベーションで何に応用されているのかがちゃんと書かれていると思います.そのため,専門的な本をいきなり読むより,まずは概観を掴むためにこの本を読んでみるのも良いと思います.

さいごに

代数学はカチッとしていて素晴らしい理論ですが,やはり難しいです.まずは色々読んでみて,自分に合った本を探して,何回も読み返すして考えると,だんだんと分かってくると思います.

(通常は)代数学を勉強した後やる代数的整数論についても,同様におすすめ本の紹介記事を書きました.もしよければ参考にしてください.

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