【入試問題解説 数学Ⅲ 積分と級数の極限】東京医科歯科大学 2011年度 第3問 - 高井セミナー

【入試問題解説 数学Ⅲ 積分と級数の極限】東京医科歯科大学 2011年度 第3問

数学

問題

自然数 $n$ に対し

$$
S_n=\int_0^1 \frac{1-(-x)^n}{1+x}\,dx,
\qquad
T_n=\sum_{k=1}^n \frac{(-1)^{k-1}}{k(k+1)}
$$

とおく。

(1) 次の不等式を示せ。

$$
\left|\,S_n-\int_0^1 \frac{1}{1+x}\,dx\,\right|\le \frac{1}{n+1}
$$

(2) $T_n-2S_n$ を $n$ を用いて表せ。

(3) 極限値

$$
\lim_{n\to\infty} T_n
$$

を求めよ。


解答

(1)

与えられた $S_n$ について

$$
S_n-\int_0^1\frac{1}{1+x}\,dx
=\int_0^1\frac{1-(-x)^n-1}{1+x}\,dx
=-\int_0^1\frac{(-x)^n}{1+x}\,dx.
$$

したがって

$$
\left|S_n-\int_0^1\frac{1}{1+x}\,dx\right|
=\left|\int_0^1\frac{(-x)^n}{1+x}\,dx\right|
\le \int_0^1\frac{x^n}{1+x}\,dx
\le \int_0^1 x^n\,dx
=\frac{1}{n+1}.
$$

よって示された。


(2)

まず

$$
\frac{1-(-x)^n}{1+x}=1-x+x^2-\cdots+(-x)^{n-1}
$$

より

$$
S_n=\int_0^1\sum_{j=0}^{n-1}(-x)^j\,dx
=\sum_{j=0}^{n-1}\frac{(-1)^j}{j+1}
=\sum_{k=1}^{n}\frac{(-1)^{k-1}}{k}.
$$

次に

$$
\frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}
$$

を用いると

$$
T_n
=\sum_{k=1}^{n}(-1)^{k-1}\left(\frac1k-\frac1{k+1}\right)
$$

$$
=\sum_{k=1}^{n}\frac{(-1)^{k-1}}{k}
-\sum_{k=1}^{n}\frac{(-1)^{k-1}}{k+1}
$$

$$
=S_n-\sum_{j=2}^{n+1}\frac{(-1)^j}{j}.
$$

ここで

$$
\sum_{j=2}^{n+1}\frac{(-1)^j}{j}
=\left(\sum_{j=1}^{n+1}\frac{(-1)^j}{j}\right)+1
=-S_{n+1}+1
$$

だから

$$
T_n=S_n+S_{n+1}-1.
$$

さらに

$$
S_{n+1}=S_n+\frac{(-1)^n}{n+1}
$$

より

$$
T_n-2S_n=\frac{(-1)^n}{n+1}-1.
$$


(3)

(1) から

$$
\left|S_n-\int_0^1\frac{1}{1+x}\,dx\right|\le\frac1{n+1}\to0
$$

なので

$$
S_n\to\int_0^1\frac{1}{1+x}\,dx=\log2.
$$

また (2) の結果より

$$
T_n=2S_n-1+\frac{(-1)^n}{n+1}.
$$

$n\to\infty$ で右辺第3項は $0$ に収束するから

$$
\lim_{n\to\infty}T_n=2\log2-1.
$$


解説(背景・意図)

この問題は、積分で定義した量 $S_n$級数で定義した量 $T_n$ の関係性を見出し、極限を求める典型問題である。出題意図は主に以下である。

  1. 誤差評価

(1) は、目標値との差を1本の積分にまとめ、絶対値の評価をする練習である。
被積分関数 $1/(1+x)$ に対して $(-x)^n$の部分が作る誤差が $O(1/n)$ で抑えられることを見抜く。

  1. 式変形による橋渡し

(2) では

$S_n$ を

$$
\frac{1-(-x)^n}{1+x}=1-x+x^2-\cdots+(-x)^{n-1}
$$

の有限等比級数の展開で、

$T_n$ は部分分数分解

$$
\frac{1}{k(k+1)}=\frac1k-\frac1{k+1}
$$

で整理する。

つまり「積分形」と「総和形」を同じ形(交代和)に移して比較するのが核心である。

  1. 極限の統合

(3) は、(1) で得た $S_n\to\log2$ と (2) の恒等式を合成して $T_n$ の極限を決める構成になっている。

個別に難しい計算をさせるのではなく、前問の結果を連鎖的に使う力を問う設計である。前問の結果をヒントとしてうまく使えるかがポイントである。

ちなみに補足すると、$S_n$ は $\log(1+x)$ の冪級数

$$
\log(1+x)=\sum_{m=1}^{\infty}(-1)^{m-1}\frac{x^m}{m}
$$

($x=1$ で条件収束)と密接に関係し、この問題はその「部分和・誤差・極限」の扱いを、積分と和の両面から確認する問題になっている。

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