【この記事は,私が尊敬する先輩に寄稿していただいた記事です.】
私は、名古屋大学大学院理学研究科の博士課程(D1)の院生です。大学院入試に関する体験談の記事を書かせていただきました。
他大学の院試を目指す人へ
私は現在、名古屋大学大学院理学研究科に所属する大学院生(D1)で、物性理論の研究を行っています。一般的に大学院生の多くは出身大学から内部進学者ですが、他大学から外部受験して入学する人も一定数います。私もそのうちの一人で、私は出身大学とは違う大学の大学院を受験し、入学しました。しかし、内部進学に比べると外部進学する人の数は極端に少ないので、外部受験に関する有益な情報が得にくいのが事実です。そこで、外部受験を考えている方に有益な情報をお伝えしたいと思い、私の大学院入試の経験を書かせていただくに至りました。
他大学の大学院を受験するに至った経緯
私は某地方国立大学工学部の出身です。私の所属していたコースは工学部でありながら、数学と物理学を学ぶことができるという、珍しい特色があるコースでした。大学入学から3年前期までは数学と物理学の基礎的な内容を学び、3年後期、4年次には数学と物理のどちらか好きな方を選択して学習、卒業研究を行います。したがって、このコースには4年間で数学と物理の両方について幅広い知識を身につけることができるというメリットがあります。しかし、それと同時にデメリットも存在します。それは、数学と物理のいずれにせよ、深い専門知識の習得が困難になるという点です。なぜなら、理学部数学科または物理学科の学生が四年間で学ぶ内容の両方を同じ四年間でカバーするのは時間的に不可能だからです。私は大学1年生のときから一貫して物理学、特に量子力学を深く学びたいと思っていたので、所属コースが持つ特色とマッチしなかったのです。そこで、私はもし大学院に進学するならば理学研究科物理専攻の研究室を目指そうと考え、結果として入学することになりました。
院試に向けて動き出す時期について
大学院入試を念頭に置いて学習することに関しては、早すぎるということはありません。早い段階で院試を意識すると当然、時間に余裕をもって専門知識を身につけることができます。それに、学習開始時期が遅いとどうしても「本番で点を取るための効率的な学習」になりがちです。入学後の研究活動では本質的な理解が要求されるので、点を取れるだけでは少し物足りません。どんな分野にしろ、本質的な理解を目指すのであればある程度の学習期間があった方が良いでしょう。ちなみに私は大学2年後期が終わった後の春休みから院試を意識した勉強を開始しました。
また、大学3年生の間に研究室訪問を行うのはとても有効だと思います(4年生ではギリギリですし、逆に2年生だと研究内容がほとんど理解できない可能性があります)。私は3年生のときに研究室を見学し、超伝導やトポロジカル絶縁体、ディラック電子系などの理論に興味を持ち現在所属している研究室の受験を決めました。そして、研究内容の情報だけではなく、院生の先輩が使っていた教科書や試験範囲等の情報を集めました(これがとても重要)。さらに、実際の研究室を訪問することで、少し先の未来で自分がその研究室で研究しているビジョンを描くことができ、とても勉強のモチベーションが上がるので研究室訪問は非常にメリットがあると思います。
勉強法について
私が勉強するときに意識していたことは「早い段階で過去問に頼りすぎない」ということです。早くから過去問ばかりを解いていると「ただ、その大学の問題で点を取れる人」になってしまう恐れがあります。ただ、過去問は勉強の指針になります。実際に私は大学3年の6月に10年分の過去問を見て傾向を分析しました。例えば、「量子力学は、調和振動子ポテンシャルの問題が出やすいんだな」とか「統計力学はFermi統計に関する問題が出やすいんだな」という具合です。私はこのように過去問を分析したら、そのまま過去問に着手するのではなく、行きたい研究室の先輩たちが使っていた伝統的な教科書を勉強しました。ここでは、過去問の役目はあくまでも「より意識して勉強する項目」を決める指針にとどめました。教科書を使った学習は10か月程度かけてじっくり行いました。その結果、標準的な問題であればその問題を解けるだけでなく、得られた答えの物理的意味なども説明できるようになりました。その上で、私は大学4年の春から過去問を本格的に解いて追い込みました。正直、ここから本番まで大事なのは根性かなと思います。
受験する大学院の決定について
もちろん第一志望に合格することが目標ではあるのですが、もし落ちてしまった場合に進学先がなくなるという事態は避けなければなりません。なので、第二志望の大学院も考えておきましょう。私は名古屋大学を第一志望にしていましたが、第二志望として北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の受験を考えていました。実際私が考えていた院試のスケジュールは、7月:名大理学研究科(自己推薦)→8月:名大理学研究科(一般入試)→10月:北陸先端大というものでした。
最後に
現在私は大学院に所属して3年目なのですが、他大学の大学院に進学して良かったと心から感じています。それは「とりあえずそのまま内部進学するか」という気持ちではなく、「この研究室で○○の研究がしたい」と明確な目標を持って進路選択をしたからです。もちろん、内部進学することも尊い選択だと思います。しかし、他大学の研究室を見ずに内部進学を決めてしまうのは少しもったいない気がします。内部進学にしろ外部進学にしろ、広い視野で様々な大学の研究室を見て進学先を決めることをお勧めします。大変長々と書いてしまいましたが、最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。
【寄稿していただいた記事は以上です.】
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