今回は、先日受験した大学院入試(院試)の受験までの流れや対策、勉強法についてお話しします。私は名古屋大学大学院の多元数理科学研究科を受験し、合格をいただきました。
志望校の決定まで
僕が大学院進学を考え出したのは、大学2年のときです。尊敬する先輩が名古屋大学の大学院に進学すると聞いてからです。
学部では、工学や物理とそれに関連する数学を中心に学ぶカリキュラムだったので、純粋に数学が好きで議論したい人が集まるという環境がありませんでした。また,高校数学の教員免許取れるので,物理も数学も知ってる高校教員になりたいという気持ちで入学しましたが,学年が上がるにつれて,やっぱりもっと純粋な数学も勉強したいなと思うようになりました.以上の理由から,数(理)学科の大学院に進むことを決めました。
大学3年の初めころに、大学院を探し始めました。所属コースから毎年何人か行くということ、地元であることなどから、「大学院は名古屋大学に行ければな」と思うようになりました。
また、京都大学や大阪大学、九州大学も調べておきました。普通は滑り止めを含め多くても2,3校の受験だと思います。(例年冬季に2次募集をしている大学院もあるので、夏季の1次募集では2校受験がベストだと思います。)いくつか調べておき、日程が例年被っていないかや、受験科目を確認すると良いでしょう。(2020年はコロナ禍で試験日や内容に大幅な変更があり、大変でした。。。)
こちらの記事でも,数学科院試の情報を載せましたので,ぜひご覧ください。
院試の勉強を開始
名大院の受験を決めた後、勉強を本格的に開始したのは、大学3年の終わり(3月ころ)です。6月に教育実習がある予定(結局コロナ禍で延期)だったのと、指導教官とのセミナーも継続していたので、早めに開始したつもりです。勉強計画はあまり立てず、この分野が苦手…というものを一覧にまとめておいて、その日の気分でやりたいところをやっていました。
まずは、過去問をやってみようと思い、HPからダウンロードし取り組みました。
名大院多元数理の過去問はこちら(HPに飛びます)
何年分かやってみました。線形代数、複素関数論は7割ほど解けましたが、微分積分と集合位相が全然できませんでした。。。( ;∀;)
私の所属している工学部では、集合位相の授業がありませんでした。また、一般的に工学部の微分積分は、実数論やεδ論法、関数列の一様収束など、数学科でやる解析の基礎を扱いません。なので、工学部(や数学科でない学科)出身の人は、早くから独学する必要があると思います。
(私は大学2年のときに松坂先生の集合位相入門を読んだのですが、問題を解く練習をしてないと全然解けませんでした。また、解析も少しずつやっていたのですが、論述するのに苦労しました。やはりインプットや理解だけでなく、手を動かす練習が必要だと実感しました。。。)
この後は、とりあえず慣れていない所を勉強しようということで、微分積分(特に、授業で未履修の部分)と集合位相を理解しなおしました。線形代数は、適当に問題を解いたり、証明をなぞったりしました。複素関数論については、留数解析は得意だったので一通り軽く復習をする程度でした。
3月頃から定期的に友人と院試数学セミナーを開催しました。物理・情報系に進学する友人がほとんどなので、微分積分・線形代数を一緒に勉強しました。基本的に友人に教えることが多いので、その中で自分の理解を深めていきました。
オススメ参考書・問題集
院試用で役に立った参考書の中でオススメをご紹介します。
・微分積分(解析)
1.明解演習微分積分 (明解演習シリーズ2) :小寺平治
(豊富な問題と綺麗な解答で有名です。ちゃんと数学科レベルの内容まで載っています。)
2.イプシロン・デルタ論法 完全攻略:
(例題が多いので使ってました。本文はくどすぎるかもしれませんが、初学者には嬉しい。解答も丁寧で、院試に出てくるような問題がそのまま例題になっていることもあるので一度読んで欲しい一冊。)
3.定本 解析概論:高木貞治
(名著。仮名遣いが古く、人によって読みにくいかもしれない。辞書代わりに使っていました。)
・線形代数
1.明解演習 線形代数 (明解演習シリーズ1):小寺平治
(豊富な問題と綺麗な解答で有名です。知らなかった命題など、たくさん載っていました。)
2.線型代数入門 (基礎数学):斎藤正彦
(きちんと書かれている教科書。辞書代わりに使っていました。)
・集合と位相
1.集合・位相入門:松坂和夫
(歴史ある本。独学を始める時に教科書として使い始めたが、位相の内容は初学者には分かりにくいかも。しかし、読み返してみるととてもしっかり書かれているので、持っていて損はない一冊。)
※下のリンクの画像は新装版です。古い表紙のものでも内容は同じです。
2.解いてみよう位相空間[改訂版]:太田春外
(問題演習用として使っていました。解答も分かりやすく、問題演習はこれ一冊で大丈夫だと思う。この本に載っている例題がそのまま試験に出てくることもあるので、模範解答探しにも使える。)
3.集合への30講 (数学30講シリーズ):志賀浩二
(分かりやすい。集合論をイマイチ理解できない人、イメージできない人、初学者にオススメ。)
4.位相への30講 (数学30講シリーズ):志賀浩二
(流れをつかみながら学習できてよい。位相とは何かあまりイメージできない人、初学者にオススメ。)
・複素関数論
1.複素関数キャンパス・ゼミ:馬場敬之
(初学者向けだが、留数解析の際の積分の収束性の議論など、実用的な部分まで載っています。正直、複素関数論の問題はこれ一冊で乗りきれる。)
過去問の取り扱い
過去問は受験をする上で大きな武器になります。大学院の数学の研究科では、HPで問題を公表している所が多いように思えます。(私は名大の他に、京大と阪大と九大の問題を閲覧して参考にしていました。)
名大院多元数理の過去問はこちら(HPに飛びます)
過去問は単に解けるかどうかではなく、出題傾向も把握できます。
私は、名大の過去問は2010年度~2020年度の約10年分(第1次募集のみ)を解きました。すると「午前の部の第1問はベクトル空間の次元や、線形写像の表現行列の話ばっかりやなぁ」とか、「最近では広義積分の収束に関する問題が出始めたなぁ」とか、分かってくるわけです。そのような傾向をつかんで、役立てると良いと思います。
また、10年分も解けば、素直に解答作成が勉強にもなります。難しい問題があったときは、教科書や参考書で調べたり、指導教官に質問したりして解答を作りました。数学が得意な友人がいれば、聞いてみるのもありでしょう。それでも解けない場合はネット上に落ちている情報(過去問解答など)を活用しましょう。特に旧帝大など受験者が多い所は、解答が拾えるはずです。(要望があれば、私もいずれ名大多元の自作解答をアップロードするつもりです。)
長くなりましたので、続きは後編にします。(後編では試験の流れや試験問題についてお話しします。)
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